桐野夏生 夜の谷を行く
山岳ベースで行われた連合赤軍の「総括」と称する凄惨なリンチにより、12人の仲間が次々に死んだ。
アジトから逃げ出し、逮捕されたメンバーの西田啓子は、5年間の服役を終え、人目を忍んで慎ましく暮らしていた。
しかしある日、元同志の熊谷から連絡が入り、決別した過去に直面することになる。
親戚と縁を切り、両親も心労の為 他界。たった一人の妹との付き合いも上手くいっているとは言えない。やはり刑務所に入った人間に対して世間の目は冷たい。
忘れたいと思っていた過去。でも彼女は、元夫で同志であった男や、自分が活動していた時の かつての友に会ってしまう。
連合赤軍浅間山荘事件は、私が中学の時に起こった事件で、連日テレビで放送されていたことをはっきり覚えています。
その時、永田洋子とはいかにも意地悪そうで、不器量、残酷な女 というイメージが強かったです。
しかし、今回この作品を読んで、彼女はどこにでもいるごく普通の女性であったのかもしれない、能力のない平凡な女性が、武装闘争を担おうとする組織のリーダーに就いてしまったことで、大きな罪を犯し、間違った行動をとってしまったのかもしれない と思いました。
勿論どんな理由があるにせよ、彼女のしたことは許されることではありませんが……。
この作品で桐野夏生は、幹部ではなく、それに従い、山に行った無名の女性兵士 を主人公にしました。
かつてのニュースを思い出すと共に、興味深く読むことができました。