マミコのひとりごと。

面白かった本をご紹介致します

西條奈加 善人長屋

 久しぶりに時代劇の短編集を読みました。西條奈加の作品を読むのも初めてです。

 とっつきに質屋 千鳥屋があるので、本当は千七長屋という名前であるのに、差配も店子も情に厚い善い人ばかりが住むと評判になり、善人長屋という二つ名のある長屋。

 しかし実は長屋の住人は、裏稼業を持つ 悪党 たちであった。

 差配の儀右衛門は表向きは質屋だが、裏では盗品を捌く故買屋。髪結い床の半造は情報屋(ねたもと)。唐吉 文吉兄弟は美人局。浪人 梶新九郎は文書の偽造を得意としている。他にも掏摸、泥棒、等々。そして儀右衛門の娘 お縫は、善人のふりをしている悪党を見てきた経験から、すぐに善人か悪人かが判断できる。

 そこにちょっとした行き違いから、かたぎの錠前職人 加助が住み始めた。

 根っからの善人で、困った人を見ていられない、人助けが生き甲斐のような加助が、面倒を持ち込むたびに、長屋の住人達は文句を言いながらも、しぶしぶ事の解決に手を貸すことになるのだが……。

 悪党といっても、裏稼業の仁義を重んじる善人長屋の面々は、根は気のいい人間ばかりなので、結局は人助けをしてしまいます。

 一芸に秀でた長屋の仲間たちが、様々な方法を駆使して本当の悪人に立ち向かい、見事やっつける結末にはスカッとさせられます。

 やっぱり日本人は、勧善懲悪の時代劇が好きなのですね。

 面白く、心がほっこり温かくなる人情時代劇。たまに、こういう作品を読んでみるのも楽しいな と感じました。