中山七里 嗤う淑女 ふたたび嗤う淑女
「ふたたび嗤う淑女」の文庫が発売されたので、前に読んだ「嗤う淑女」と続けて読んでみました。
野々宮恭子は、中学校でずっと苛められていた。そこに従妹の蒲生美智留が転校してくる。美智留は自分の持つ 美しさとしたたかさを使って恭子のへの苛めを止めさせる。
しかし恭子は貧血に悩まされており、検査の結果 再生不良性貧血 と診断される。
完治するには骨髄移植しかない。美智留は恭子のドナーになり、恭子の命は救われる。美貌と明晰な頭脳を持つ美知留に、強烈な憧れを抱いてしまう恭子だったが、それが地獄の始まりであった。
美知留の父は、事業に失敗して妻からも逃げられ、自暴自棄な生活を送っていた。
そして自分の娘を不満のはけ口にし、性的虐待を行っていたのだ。
美知留の境遇に同情し、憤慨した恭子は、美知留の計画に乗って二人で彼女の父親を亡き者にしようとするのだが……。
時は移り、美しく成長した美知留は、老若男女の欲望を残酷にを操り、彼等の運命を次々に狂わせてゆく。
努力が報われず、高価な買い物によってしかストレスを発散できない女子銀行員。
会社をリストラされ、再就職もせず、現実逃避しかできないダメ男の妻。
そして、邪魔になった恭子やその家族も美知留は毒牙にかけようとする。
その後、美智留は逮捕されるが、その巧な悪知恵によって罪には問われない。
蒲生美智留が、稀代の悪女 として世間を震撼させた事件から三年。
《野々宮恭子》と名乗る美貌の投資アドバイザーが現れた。
国会議員 柳井耕一郎の資金団体で事務局長を務める女性。
柳井の票の取りまとめをしている宗教団体の副館長。
柳井の後援会長。そして柳井の秘書兼愛人。
彼等は謎の女性 野々宮恭子の指南によって、破滅への道を突き進んでいき、命を堕とすことになる。
そして柳井耕一郎自身も、彼に恨みを持つ男の手にかかって……。
本当の悪女とは見た目が美しく、話し方も優しい。
人の話をよく聞いて「あなたの気持ちはわかります」というように相手にとって快い言葉を投げかけてくれます。
でもその実態は恐ろしい。きついことを言ったり、誰にでもわかるような意地悪をするより余程怖いのです。
蒲生美知留の本当の狙いは何なのか?彼女は一体どうなれば満足なのか?
その辺もはっきりしないところが、この話を不気味にしています。
背筋が寒くなるように怖くて、でも面白い作品でした。