マミコのひとりごと。

面白かった本をご紹介致します

中山七里 笑えシャイロック

 帝都第一銀行に勤務する結城真悟は、勤続3年目の春に新宿支店の渉外部に移動になる。それまで都内の大型店舗で営業部に属し、自分では出世競争で、同期に先んじていると認識していた結城は落胆する。債権を回収する渉外部は、営業部の表道に対して裏道だからである。

 しかし、渉外部の先輩 山賀雄平との出会いによって蒙を啓かれる。山賀は債権回収に関しては右に出る者ない腕前で、シェイクスピアの「ヴェニスの商人」に登場する強欲なユダヤ人の金貸しに因んで「シャイロック山賀」という綽名を付けられていた。

 利息支払いを滞らせた債務者に対して破産申し立てを進めるなど、容赦のない態度に出る山賀であったが、やがて結城は、山賀の行動は金融業務についての確固たる思想に貫かれていることを理解し、山賀に尊敬の念を抱くようになる。

 山賀の背中を追い、業務に邁進する結城。しかし、山賀は何者かに殺害されてしまう。

 事件発生後、結城の前に新宿署の諏訪公次という刑事が現れ、彼に捜査協力を持ちかけてきた。事件の背景に帝都第一銀行の隠れ不良債権の問題があることが予想されるからである。

 山賀の仕事を引き継ぐことになった結城は、巨額の債務者たちと交渉する。

 金を回収する案を立てるためには、相手について深く知らなければならない。

 それぞれが殺人事件の容疑者でもあるのだから、容疑者の可能性を探ることにもなるのだ。

 また、不良債権を抱えたままでは、水面下で進んでいる東西銀行との合併で、帝都銀行の立場は不利になってしまう。

 身勝手な理屈をこねる債務者達に、時に結城は、身の危険を感じながらも立ち向かい、回収プランを実行してゆく。

 しかし犯人は意外なところに…………。

 場当たり的な運営が続いたために、強度が著しく損なわれた日本の経済活動。

 誰も責任を負わないという倫理観の欠如がもたらした腐敗の構造。

 山賀が教え、結城が受けついだのは、それらに対する反発と自分の信念を貫く勇気です。

 池井戸潤半沢直樹シリーズを読んだ時も思いましたが、銀行小説は面白いですね。

 私達が知らない銀行の内部、こんな仕事もしているんだ!と驚かされることが大変多くて興味深いです。

 そして思いがけないラスト。中山七里さん 本当にいろんなジャンルの作品を書かれるんだなあ!と唯々感心しました。