貫井徳郎 罪と祈り
東京 浅草 地元で皆に慕われてた元警察官 濱中辰治が、隅田川に落ちて死亡した。
単なる事故ではない。側頭部には殴られた痕があったのだ。
捜査にあたることになったのは、辰治の亡き親友の息子 芦原賢剛。辰治は賢剛にとって父親代わりの存在だった。賢剛の父 智士は、30年以上前に自殺していたのだった。
賢剛は、辰治の息子で自分の兄弟のような存在である、亮輔とその母、また辰治の知人に話を聞いて回る。
しかし知人は皆 彼を仕事熱心なお巡りさんであったという印象を持ってはいるが、それ以上は特に知らない、それほど親しかったわけでもない。と言うばかりで、捜査は進展しない。
息子の亮輔にとっても、辰治は何か人を寄せ付けない 壁のようなものを作っていた父親だった。父に死なれて、初めて自分は父ことを何も知らなかったのだ と感じた亮輔は、父の遺品から辰治の過去に何か手がかりがあるのではと思い、父の死の真相を探っていく。
現在の亮輔と賢剛。30年以上過去に遡って、辰治と智士が交互に登場するというストーリーの組み立てになっています。
そして、昭和天皇の 大喪の礼 の日に起こった誘拐事件の真相が明るみに...........。
普通の善人が罪を犯してしまう。自分の為ではなく、人の為にも罪を犯してしまうことがある。人間は弱いのですね。470ページの読み応えある作品でした。