マミコのひとりごと。

面白かった本をご紹介致します

垣谷美雨 女たちの避難所

 東日本大震災が起こった日、九死に一生を得た椿原福子は、津波から助けた少年 昌也を連れて避難所に向かった。

 乳飲み子を抱えた漆山遠乃は、舅 義兄と共に。

 息子とはぐれたシングルマザーの山野渚は、避難所で息子 昌也と出会うことが出来た。

 しかしそこは、『絆』を盾にダンボールの仕切りも使わせない監視社会。男尊女卑が蔓延り、人目を惹く美しい遠乃は好奇の目に晒され、授乳もままならなかった。

 思いやりがあり、いつも遠乃を励ましてくれた優しい夫は亡くなり、生き残った舅は、頑固で意地が悪く横暴である。津波に飲まれて妻が亡くなったのを、遠乃のせいにして、彼女を責め立てる。 

 また、好色で堪え性がない独身の義兄は、弟が死んだのをこれ幸いと、美しい義妹と結婚しようとしている。

 福子の夫も怠け者でマザコン、何の仕事をしても長続きせず、見栄っ張りでプライドばかり高く、周囲の人間を見下しては陰口ばかり叩いていた。

 「いっそ死んでくれていたらどんなにいいだろう!」という福子の願いも天には届かず、夫は生きていた。そして愚かにも義援金BMWを買ってしまったのである。

 また、渚は夫のDVに耐えかねて離婚した。

 母親が田畑を売って、港の飲み屋街に買ってくれた空き店舗で、母親と一緒に小料理屋を開いた。夜はスナックにして、口うるさい田舎の人たちの噂や好奇な目に耐えながら、なんとか頑張ってやって来た。

 しかし、優しかった母は逃げ遅れて亡くなった。店は流され、これから息子と二人で生きていかなければならない。

 やがて虐げられて来た、3人の女性たちは立ち上がる。福子の息子夫婦の協力を得て東京で共同生活を送ることに……。

 不安を抱えながらも、3人それぞれ仕事を持ち、明るい未来が見えてくる。

 垣谷さんの作品には、どうしようもないダメ男がしばしば登場します。そんな男たちの自分勝手なせりふを聞いていると、憎らしくて殴りつけてやりたくなります。

 でも、そんなダメ男たちに虐げられ、我慢し続けて来た女性たちの堪忍袋の緒が切れる時、それは思いもかけないパワーを生むことになるのです。

 今回の作品も主人公たちと一緒に、ハラハラしたり、憤ったり、大変面白く読むことが出来ました。未来に希望が持てるラストいいですね。