マミコのひとりごと。

面白かった本をご紹介致します

宮部みゆき この世の春

 宮部みゆきの作品を久しぶりに読みました。

 デビュー30周年記念作品として刊行され、令和元年12月に文庫化されたようです。

 小説の舞台は、下野国(しもつけのくに)にある北見藩という架空の藩である。

 隠居した元作事方組頭の各務数右衛門(かがみ かずえもん)と、夫に離別された娘の多紀が静かに暮らす村に、御用人頭  伊東成孝の嫡男を抱いた乳母が助けを求めて逃げてくるところから物語は始まる。

 伊東は、藩主 北見重興から重用され、低い身分から成り上がったが、心を病んだ重興が家老たちから「押込」されることになったため、お役御免とされてしまった。

 伊東とは特別の繋がりのないはずの父を、何故乳母は頼ってきたのか?多紀の疑問に答えることなく、父はこの世を去ってしまう。

 一人になった多紀のもとに従妹の半十郎が現れ、はっきりした説明も受けぬままに、多紀は藩主の別邸 五香苑に連れて行かれる。そこには、錯乱状態にある重興が座敷牢に幽閉され、死んだと思われていた伊東も捕らわれていたのだ。

 名君であった父の跡を継ぐにふさわしい人格と美貌を備えた重興が、自分の中にいくつもの別人格を持っている という事実に、驚き衝撃を受ける多紀であったが、五香苑にとどまって重興に仕える決意をする。

 多紀は、とても理不尽な理由で、夫から離縁されていたのである。

 死者の魂を呼び出す「御霊繰」の能力を持つ一族の暮らす村を襲った悲劇。

 18年前に始まる連続少年失踪事件。

 何故 重興は多重人格者になってしまったのか?

 呪いや恨み、見え隠れする悪意の正体が徐々に解き明かされていく。

 そしてそこには、多紀を始め、わが身に換えて重興そ守ろうとする人達の善意がある。

 呪いや怪しい術など、オカルト的なところもありますが、ストーリーが大変面白く、ミステリーとしても読みごたえがあり、最後には  ああよかった と気持ちも温かくなる作品でした。

 宮部みゆきの時代小説。やはり面白いと実感しました。