マミコのひとりごと。

面白かった本をご紹介致します

貫井徳郎 邯鄲の島遥かなり

 御一新直後、神生島に一ノ屋の末裔、イチマツが帰って来た。

 輝くような美貌を持つイチマツに、島の女たちは魅入られ、次々に彼のもとに通うようになる。しかし彼女たちは、イチマツを独占しようとはしない。

 多くの女たちが生んだイチマツの子供たちには、皆 体のどこかに唇の形に似た小さな痣があり、それはイチマツ痣と呼ばれるようになる。

 そしてこの痣は、イチマツの血を引く者にはに必ず受け継がれてゆく。

 イチマツは働かず、いつもぶらぶらしている。働かずとも島の人たちが食べ物を届けてくれるのである。彼はいるだけで、島に福をもたらすと言われているのであった。

 そんなイチマツもある日誰にも告げず、島を去った。

 時は移り、関東大震災、太平洋戦争から終戦、そして現在へとその間に一ノ屋がどうなり、島の人々の生活がどう移り変わっていったかを語った長編歴史小説です。

 幼い時は知恵が足りないと思われていたが、実は非常に賢く本土に渡って勉強し、島に大きな利益をもたらした男。

 特別優れた点があるわけでもないのに、一ノ屋の跡取りとなったばかりに、何かをなさねばならないと焦り苦しむ男。

 島の鍾乳洞に御用金が隠されていると信じて、九州の炭鉱に働きに行って稼いだ金を御用金探しにつぎ込む男。

 あまりに美しく生まれたばかりに、多くの男性が自分を取り合うことに疲れ、尼になってしまった娘等。

  宮部みゆきの「ソロモンの偽証」のような発売のされ方で、一ヶ月に一貫づつ、上中下と間を置いて売り出されるので、早く続きが読みたくなって、どうしても買ってしまいます。

 150年間の歴史が全部で17の話に収められており、一つ一つは独立した話ですが、全体としては、一ノ屋やイチマツの子孫として繋がりを持っているという作品でした。

 貫井徳郎としては、全く新しい形の作品と言えるでしょうし、歴史小説も初めてではないでしょうか?

 こういう作品もかくのだなあ と思いました。これまで読んだ作品とは違った作風でしたが、面白かったです。