マミコのひとりごと。

面白かった本をご紹介致します

林 真理子 我らがパラダイス

 介護付き高級マンション セブンスター・タウン。

 入居費8600万円、夫婦ものだと1億2000万円かかる。そこに勤める3人の女性たち。

 受付係の細川邦子には、ボケが始まった父親がいる。

 母親が亡くなった後、兄夫婦が最後まで父親の面倒を見る ということで、邦子は相続を放棄をしたのであったが、兄嫁が突然家を出て娘のところに行ってしまった。

 父親が風呂に入った時、見守りの為に洗面所にいた兄嫁に、父親が全裸で抱きついてきたというのだ。

 看護師の田代朝子には、寝たきりになった母親がいる。

 腕のいい助産師だった母は、離婚した後、女手一つで朝子と弟を育て、70歳まで颯爽と働き続けた。しかし3年前脳溢血で倒れ、リハビリによって少しは回復したものの、その後転倒してしまったのだ。

 母の介護のため、朝子は勤めていた病院を辞め、二人でなんとか静かに暮らしていたが、失業した弟 慎一が転がり込んで来たことから、生活は一変してしまう。

 慎一は全く生活費を入れようとせず、真剣に仕事を探そうともしない。食費や光熱費ばかり嵩むことになり、仕方なく朝子は母親の介護を慎一に任せ、求人広告を見て、給料のいいセブンスター・タウンで働くことを決める。

 しかし慎一は頼りにならず、昔の彼女とよりを戻すことばかり考えている。

 ダイニング係の丹羽さつきは、膵臓癌で父親を亡くした。最先端医療のクリニックに連れて行き、民間療法もいろいろ試して手を尽くしたが、父は助からなかった。

 借地に住んでいたので、父が亡くなれば家を出ていかなければならない。母親は急に老い始め、二人は困窮することになる。

 次第に追い詰められていく女性 3人は、セブンスターの部屋をなんとか利用できないかと考えるのだった。

 セブンスター・タウンでは、自力で生活できなくなった住人達は、普通の住まいから上の階の部屋に移り、手厚い看護 介護を受けることになっている。

 その部屋に、自分の親達を無断で住まわせようと計画する。

 意識のない住人なら、自分の親でも入れるような安い施設に入ってもわからないだろう。どうせ身内は見舞いに来ない。それなら書類に付いている写真を入れ替えて自分の親をセブンスターに住まわせ、本来の住人を別の安い施設に送り込んでしまおう!

 そんな計画を3人は実行に移すのであったが、これはれっきとした犯罪行為である。そんなことが長く続くわけはない。

 富める者しか安らかな老後は過ごせないのか?

 年金の範囲内で入れる施設のサービスには限りがあります。

 かと言って、認知症、寝たきりの老人を家で介護することにも限度があります。

 長い介護生活は、家族の自由と幸せを奪ってしまうからです。

 後半の展開は、現実離れしていると言えますが、誰にでも起こりうる身近で、深刻な題材をユーモラスに仕上げているところは、林 真理子ならではでしょう。

 現代を映す面白くて、でもちょっと怖いブラックコメディでした。