柚月裕子の作品
柚月裕子の 孤老の血 を読んだ時、非常に男性的な作品だと思いました。
舞台となるのは、昭和63年の 呉をモデルにした広島県 呉原市。
主人公は、日岡秀一巡査。その上司は、大上省吾巡査部長で、県警トップの警察表彰
の数を誇る敏腕刑事ながら、暴力団との癒着を噂され、県警観察室から目をつけられている問題の多い刑事でもある。
大上の違法捜査に戸惑いながら、日岡は仁義なき極道の男たちに挑んでいく。
やがて暴力団土同志の抗争が勃発。
一見 黒川博行を思わせるようなハードボイルドです。
他に、朽ちない桜 ウツボカズラの甘い息 慈雨 などをよみましたが、それぞれ
面白い作品でした。
でも、今回デビュ-長編作の 臨床真理を読んで、いかにも女性らしい作品だと思いました。
主人公は、臨床心理士の佐久間美帆。臨床心理士は、医療行為は出来ませんが、
心理試験やカウンセリングを行い、患者自身の力で、精神状態を回復させることを支援していく仕事だそうです。
臨床真理というタイトルも 心理と真理をかけていて、ここに本作のテーマがあるとのこと。
また、共感覚という言葉も私は知りませんでしたが、文字や言葉に色を感じたり、音や味を覚えたりする感覚だそうです。
知的障害者厚生施設に入所していて、親しかった少女 綾の死をきっかけに問題をおこしてしまった、共感覚を持つ不思議な青年 司を救うために、美帆は、少女の死の謎
そして施設の醜悪な事件の核心に迫っていきます。
次はどうなっていくんだろう というドキドキ感もあって、一気に読んでしまいました。
今まで柚月裕子の作品を読んでいない方にもお勧めの一作です。