ファーストラブ 島本理生
島本理生の作品を初めて読みました。父親殺害の容疑で逮捕された女子大生環菜。 美人でアナウンサー志望ということもあり、事件は大きな話題となるが、動機は不明だった。
臨床心理士の由紀は、ノンフィクションの執筆の為環菜に会い、彼女の周囲の人々に取材をしていく。その過程で、環菜が経験してきた数々の辛い過去が明らかになっていく。
血のつながらない画家の父親から受けた虐待とも言えるしうち。夫の顔色ばかり気にして娘を守ろうとしない母親。彼女の容姿にしか興味を持たない男性たち。環菜が自分自身でも把握できていなかった心の形が、事件が発生するまでの感情の軌跡が解き明かされていく。
そしてそれと並行して、主人公 由紀の人生も紐解かれていく。彼女もまた、自分の父親に対して憎悪を抱かなければならない理由があったのだ。
環菜に寄り添うことで、由紀自身もこれまで自分の人生を突き動かしていたものに向き合っていく。
優しく理解ある夫に見守られながらも、夫の弟となぜかギクシャクしている理由も徐々にわかってきて、とても興味深く最後まで読むことができました。