中山七里 護られなかった者たちへ
仙台市で他殺死体が発見された。拘束したまま餓死させる という残酷な殺害方法から、担当刑事の苫篠は、怨恨の線で捜査を始める。
被害者は、福祉保健事務所の課長 三雲忠勝。人から恨まれるとは思えない聖人のような人物で、容疑者は一向に浮かんでこない。
捜査が暗礁に乗り上げるなか、新な遺体が発見される。三雲と同じように拘束され、餓死させられていたのだ。
被害者は、県議会議員の城之内猛留。石部金吉と言われる堅物であり、金に綺麗で高邁な信条を実践している為、他の議員たちからも一目置かれている。
そんな真面目な人格者二人が、何故このような残虐な殺され方をしたのか?
一方、事件の数日前に出所した利根勝久は、自分が刑務所に入るきっかけとなった ある出来事の関係者を探っていた……。
今回 この作品を読んで、生活保護の実態について深く考えさせられました。
収入や資産があるのに隠していたり、健康であるのに働かずにぶらぶら遊んで、生活保護を受給しようとする 不届き者がいるのは確かですし、国民の血税が使われるのですから、不正受給を見逃せないというのは分かります。
しかし、本当に必要な人達には支給するべきでしょう。
相手の立場を考えることなく、ろくに話も聞かずに、闇雲に支給を拒絶しようとする福祉事務所の職員が本当に存在するとしたら、それは恐ろしいことです。
相手を見下し、プライドをズタズタにして、生活保護の申請をあきらめさせようとすることが、福祉事務所の仕事なのでしょうか?
勿論 そんな職員ばかりではなく、申請者にきちんと向き合って、誠実に仕事をしている職員もいるとは思いますが……。
殺人事件の裏に隠された悲惨な真実。
とても切なくなるのに、でも読みだしたら止まらない。大変よく出来た、社会派ミステリーでした。
10月に映画も公開予定ですね。
どんな風に演出されているのか?そちらも楽しみです。