染井為人 悪い夏
26歳の佐々木守は、生活保護受給者のもとを回るケースワーカー。
同僚の高野洋司が、生活保護の打ち切りをちらつかせ、ケースの女性に肉体関係を強要していると知り、真相を確かめようと、その女性 林野愛美の家を訪ねる。
愛美の娘 美空にクレヨンを買ってやったことが切っ掛けになり、守は愛美のもとに通うようになる。女性に免疫のない守は、愛美に好意を持たれていると思い、同棲を始め結婚も考えるようになる。
しかし、それは彼の転落人生の始まりであった。
腰痛持ちだと言って、すっかり回復しているにもかかわらず、仕事を探そうとしない小悪党。息子から援助を受けているのを隠し、収入がないという老女。
愛美もそうであるが、みんな生活保護の不正受給者である。
そこに東京進出を目論む地方ヤクザの金本や、守の同僚で一見仕事熱心、正義感が強く勝気な女性 宮田有子の存在が複雑に絡まり合って来る。
平凡だが、ただ真面目に仕事と向き合って来た守が、何故陥れられ、悲惨な境遇に叩き落されなくてはならなかったのか?
守のとった行動は、決して褒められたものではありませんが、ここまで酷い目に合うのは、あまりにも可哀そうだと思いました。もう少しなんとか救われないのか と。
生活保護の不正受給は、大きな社会問題です。
弱者を装い、国から金を貪る連中がおり、その金は真面目に働いている人々の血税によって賄われています。
しかし、これは立場によって随分見方が変わりますね。
中山七里の「護られなかったものたちへ」は、本当に生活に困窮し、身寄り頼りのない老女が生活保護を受けられず、餓死してしまう話で、なんと酷いケースワーカーがいるものだ と憤慨したものでした。
でもこの「悪い夏」に出てくるほとんどのケースは、あきらかに怠け者で、こんな奴らに生活保護を与えていたら、真面目に働く者が報われない と思いました。
そしてこの作品でも、本当に困っている人には、受給が認められず、その人は自殺してしまうのです。なんと理不尽な!
これらはみな、杜撰な審査が原因と言えるでしょう。
骨の折れる仕事だとは思いますが、きちんと審査し、本当に生活保護を必要とする困窮者だけに支給してあげてほしいものですね。