中山七里 夜がどれほど暗くても
志賀倫成は、大手出版社の雑誌「週間春潮」の副編集長。充実した編集者生活を送っていた。
しかし大学生の息子 健輔に、ストーカー殺人を犯して自殺したという疑いがかかる。
大学の講師に横恋慕し、ストーキングしたあげく無理心中をはかり、彼女の夫も巻き添えにして殺してしまったというのだ。
彼は息子がそんな馬鹿なことをしたとは、とても信じられない。なんとかして真実を知りたいと思う。
今まで人を追いかけて取材する側だった倫成だが、今度は自分が追われる側、カメラやマイクをむけられる側になる。現在の仕事からも外され、ランクの落ちる雑誌の部署に転属させられてしまう。
妻との中もギクシャクして喧嘩が絶えず、妻は家を出て行ってしまう。
まさに四面楚歌。精神がすり潰されていく。そんな時、被害者の一人娘である奈々美に出会う。奈々美は、彼を激しく罵倒するのだが………。
負の連鎖のように次から次へと倫成を不幸が襲うので、読んでいて辛くなってしまいます。
また、世論の代表 自分達こそが正義のような顔をして取材対象を追いかけるマスコミの無神経さ、残酷さにも憤りを覚えます。
しかし、倫成自身が事件前にはそんな雑誌記者の一人であった訳ですから、彼への風当たりは一般の人以上に強く、彼は怒りのやり場をどこに持っていってよいかわからず、一層苦しむことになるのです。
胸が痛くなるような悲しい話ですが、でも最後には真実が明かされ、希望の光がみえてくる。やれやれ やっとほっと出来た、そんな話。面白かったです。