乃南アサ 暗鬼
法子は、見合いをして大家族に嫁いだ。
一家の要たるカリスマ大ばばちゃんを中心に、仲睦まじい義祖父母、やさしい舅と姑、朗らかな義妹、そして心から愛してくれるハンサムな夫。
気になったのは、義弟に知的障害があることと、義祖父が数年前から寝たきりの状態にあること、家族みんなとの同居が結婚の絶対条件であったことである。
結婚前 若干の不安はあったものの、家族みんなに大切にされ、法子は幸せであった。
しかしある日、近所でプロパンガスが爆発炎上し、そこに住む一家4人が焼け死ぬという事件が起きる。無理心中だったというのだ。
その家は、法子の夫の家族が貸している家であり、法子は嫁いで少し経った頃、そこに住む初老の男性に会ったことがある。
その男性は、法子に「聞いてもらいたいことがある」と何かを伝えようとしたのであったが、ちょうどそこに姑がやって来て、彼の話を聞くことは出来なかった。
法子は、そのことが気になってならず、心中事件に家族が関係しているのではないか と疑惑を抱くようになる。
一見理想的な家族に囲まれながら、彼女は徐々に彼らに対する不信感を募らせ、疑心暗鬼に陥っていく。
そして、やがて明かされる呪われた家族の真実!信じられないほどおぞましい世界!
しかし、彼らは自分たちこそが正しく、選ばれた者なのだ !と信じて疑わない。
なんとも不気味で怖い話でした。
嫁ぎ先の普通と自分の実家の普通は違う!これは、結婚した女性が誰もが一度は味わう感覚だといえるでしょう。
そんな感覚の究極の姿が、大変異常に、恐ろしい話となって描かれた作品だと 言えるかもしれません。