垣谷美雨 夫の墓には入りません
垣谷美雨の作品は、数年前「老後の資金がありません」「あなたの人生片づけます」
を読み、「如何にもこんな人達いそうだな。面白いな」と思いました。
今回もなかなか面白かったです。
高瀬夏葉子(かよこ)と夫との仲は冷え切っていた。
脳溢血で急死した夫は、まだ46歳。東京に出張に行っていたはずが、地元のビジネスホテルで亡くなったのである。
結婚して15年、夫の転勤で夫の実家のある長崎に来てから10年以上経つが、その間どのくらい一緒に過ごした時間があったろう。
誕生日も結婚記念日もいつも残業か出張。あまり会話もなく、惰性で結婚生活を続けていたようなものである。
それでも夏葉子にとって、海を見下ろす高台にある、赤煉瓦の我が家には愛着があり、パートとはいえタウン情報誌の記者の仕事は、やりがいがあった。
今では気の置けない友人もいる。
夫の死によって住宅ローンはチャラになり、これからは自由を楽しもうと思ったのもつかの間、舅姑の過干渉が始まる。
そして夫が長年に渡って、愛人らしき女に送金していたことが判明する。
舅も姑も、晩年は長男の嫁である夏葉子の世話になるのを当然と考えているようだ。
その後、夏葉子に恋人が出来、愛されていると実感して幸せな気持ちになるのだが、結局その男も夏葉子のお金をあてにし、便利な女性として見ていることを知る。
何を頼んでも断らないヤツ、「いい人ね」 と言われながら、ずっと便利に使われる損な役割をしてきた自分に、夏葉子は気付くことになる。
世の中には、図々しい人間というのがいます。
人助けは悪いことではありません。特に困った時はお互い様ですから、経済的 精神的に本当に困っている人がいたら、支えてあげるべきでしょう。
でも、いつまでも甘えてもらっていては困ります。
ある程度危機を脱したら、もう人に頼るべきではないのです。
助けてもらった人は、出来るだけそれ以上迷惑をかけないように努力すべきでしょうし、受けた恩はいずれ何かの形で返すべきです。
みんながそう考えてくれるといいのですが、「こんなによくして貰ってラッキー!」
「この人には甘えてもいいんだ。また頼んだら、何でも聴いてもらるわ」とばかりに、当たり前のような顔をして甘えてくる人って結構いるのですよ。
自分が出来ないことや、明らかに迷惑と感じることを頼まれたら、はっき NO と言うべきです。
そんなことで壊れてしまうような人間関係なら、壊れても構わないんじゃないでしょうか?
夏葉子も本当の意味で強くなり、これからは姑ともいい関係を築いていけるのかな?と思わせるラストでした。
いい人と便利な人は違う!頼られるのとなめられるのは違うのだ!ということを再確認できた一冊でした。