垣谷美雨 もう別れてもいいですか
原田澄子は58歳、給食センターでパートをしながら夫と二人暮らしをしている。
長女は東京で区役所に勤めており、一人暮らし。次女は結婚して夫、息子と共に名古屋に住んでいる。
澄子の夫は、暴力をふるうわけでもはなく、浮気やギャンブルに現を抜かしているわけでもない。生活費も一応いれてはくれる。世間的に見れば、別に悪い夫とは言えないかも知れない。
しかし澄子は、もう夫と同じ空気を吸うのも嫌なのである。
結婚以来ずっと夫に虐げられて暮らしてきた。いつも馬鹿にされ、暴言を浴びせられる。何をしてあげても感謝されたことなど一度もない。
そんな生活を続けて来たせいか、澄子はすっかり自信を失い、何でも自分が悪いと思う癖がついてしまった。
なんとか離婚したい。でもお金がない!経済的不安が付きまとう。それに狭い田舎町のこと、世間体が悪いという気持ちからなかなか踏ん切りがつかない。
だが、同級生の美佐緒が離婚したことに背中を押され、親切な弁護士のアドバイスもあって、澄子はついに家を出る決心をする。
垣谷さんの作品は、どこにでもいる平凡な中年や初老の女性が主人公であることが多く、とても身近に感じられます。
特別取柄のない平凡な主婦でも、みんなその人なりに努力し、懸命に生きている。
誰からも軽んじられたり、馬鹿にされる言われはないのです。
そんな平凡な女性の決断と自立の物語。
世間体を気にせず、自分の力で新な人生を切り開こうとした澄子にエールを送りたくなりました。