マミコのひとりごと。

面白かった本をご紹介致します

町田 そのこ 52ヘルツのクジラたち

 本屋大賞 第1位  52ヘルツのクジラたち を読みました。

 昔は漁場として栄えたという大分県の海辺の小さな町に、三島貴瑚は東京から移り住んで来た。彼女が住み始めたのは、昔 芸者をしていたという母方の祖母が晩年暮らしていた家。

 田舎の人々の好奇な目に晒され、時には要らぬ説教をされたりしながら、貴瑚は空虚な日々を過ごしていた。

 貴瑚は、幼い時から母親と義父から虐待を受け、腹違いの弟とずっと差別されながら育った。高校卒業を機にやっと自立しようとした矢先に、義父が病に倒れ、今度は母から義父の介護を命じられる。しかし義父は感謝するどころか、思うようにならない自分の体に苛立ち、益々彼女に辛くあたり、杖で殴るようになる。

 「もう 死んでもいい」と思いながらぼんやり街を歩いていた時、彼女は高校の時の友人 美晴と彼女の職場の先輩に出会う。彼らの協力によって貴瑚は実家から解放され、就職先も見つけることができる。やっと手にすることが出来た自由で楽しい日々。

 恋人もできて、生まれて初めて女性としての喜びを知った貴瑚であったが、その男性も彼女のことを、単に都合のよい女としてしか見ていなかったのである。

 ボロボロになって田舎暮らしを始めた貴瑚の前に現れたのは、母親からの虐待によって言葉を失った一人の少年であった。彼は「ムシ」と呼ばれ、祖父からも無視されて学校にも行けない悲惨な毎日を送っていたのだ。

 52ヘルツのクジラは、他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。世界で一番孤独だと言われているこのクジラの声を聴く時、貴瑚は何故か仲間を得たようにやすらぎを覚える。そして「ムシ」と呼ばれていた少年もクジラの声を聴いて涙するのだった。

 読んでいて言葉にならないほど、とても切なく悲しくなりましたが、最後には、善意ある人たちの優しさに支えられて希望の光が見えてきます。

 さすが本屋大賞1位!読後感が爽やかで素敵な作品だと思いました。