マミコのひとりごと。

面白かった本をご紹介致します

貫井徳郎 転生

 主人公は、心臓移植の手術を終えたばかりの青年 和泉。

 体調は手術前に比べてうそのようによくなったが、食べ物の好みが変わり、今まで興味のなかったショパンの曲に心を奪われ、絵画にも興味を持ち、急に絵が上手く描けるようになったりする。

 また、突然夢の中に現われた恵梨子という謎の女性。その夢は現実のように生々しく、彼は会ったこともないその女性に心惹かれてゆく。

 もしかして彼女が心臓の持ち主ではないのか?心臓に残っていた記憶が自分の性格に影響を与えているのかもしれない。

 科学的には有り得ないことではあるが、現にそういった例もアメリカでは実在すると言う。

 やがて和泉は、夢の記憶だけを頼りに、タブーであるドナーの家族との接触を図ろうとするのであったが……。

 臓器移植は、脳死と切り離すことのできない問題であり、これは東野圭吾の「人魚の眠る家」を読んだ時も考えさせられたことでした。

 自分の身内が脳死状態になってしまった時、その家族はすんなりと臓器提供に賛成できるであろうか?

 またレシピエントも、自分の命がドナーの死によって支えられているわけですから、その心境は複雑だろうと思います。

 ただ、レシピエントに出来ることがあるとするならば、健康に気を付けて貰った命を大切に、精一杯自分の人生を生ききることしかない と言えるでしょう。

 近代医学の闇に直面しながらも、爽やかな恋愛小説の要素も含んだ作品で、貫井徳郎の新な一面を見た気がしました。