マミコのひとりごと。

面白かった本をご紹介致します

貫井徳郎 迷宮遡行

 迷宮遡行は「慟哭」で華々しくデビュウした貫井徳郎が、2作目に発表した「烙印」を全面改稿して、新なタイトルを冠した作品だそうです。

 「あなたとはやっていけなくなりました。ごめんなさい。私を探さないでください」

ある日突然、妻の絢子はそれだけを書き残して、迫水の許から姿を消す。

 全く理由のわからない迫水であったが、それでも親友の後東に励まされ、妻を探し出す決意を固める。

 途切れそうな手がかりをたどり、絢子の行方を追う迫水の前に、やがて暴力団関係者らしき男たちの影がちらつき始める。

 自分は絢子のことを何も知らなかったのではないか?そもそも彼女は何者だったのか?

 迫水が絢子の知人を探し、過去を知ろうとすればするほど謎は深まってゆく。

 迫水は、小さい時から兄にコンプレックスを抱いて育った。

 兄は、成績優秀でスポーツ万能。クラスではリーダーシップを発揮し、大学卒業後は警視庁に入庁し、準キャリアとして捜査4課に所属している。

 それに引き替え迫水は、見た目はさえないし、お金もない。現在失業中で、妻のパートの収入に頼って3か月間暮らしていたのだから、美人の妻に愛想をつかされても仕方ないと言える。

 それでも絢子と過ごした平和な日々、何度か旅行した楽しかった思い出などをかみ締めると、彼はどうしても彼女をあきらめることができない。

 何度も危険な目に遭いながら、彼は自分でも意識せずに強くなってゆく。

 2つの暴力団に翻弄される迫水。そしてやっと妻に会えた時、それはあまりにも悲しい再会であった。

 これだけ苦労したのに何も報われない。ただ虚しく悲しくなるラストでした。

 もうちょっと救われる何かがあってもいいのに……。と思ってしまう読者は、私の他にもいるかも知れません。