マミコのひとりごと。

面白かった本をご紹介致します

貫井徳郎 天使の屍

 イラストレーターの青木と妻の美保子。彼等の中学生の息子 優馬は、青木と血の繋がりはなかったが、成績優秀で、親から見て「良い子」であった。

 優馬は、テレビでの中学生のいじめによる自殺の報道を見て、「苛められて自殺するなんて馬鹿だよ」と言う。

 ところがその晩、優馬は「コンビニに行く」と言い残して家を出ると、そのまま近所のマンションから飛び降り自殺をしてしまうのだ。

 優馬の部屋からは短い遺書が発見され、中身を消去された30本以上のビデオテープが見つかった。更に、優馬の死体からはLSDが検出される。

 血が繋がっていないこともあり、父親としての自信が揺らぐ青木は、息子の死の真相を探るために、優馬と仲の良かった友人グループから話を聞いて回る。

 「子供の論理」を身にまとい、本心を明かさない子供たち。

 そして、さらに同級生が一人、また一人とビルから身を投げて命を落とす。遺体からは同じくLSDが検出されて……。

 どうして少年たちは死ななければならなかったのか?

 最後まで読んでも、また生き残った最後の少年の言葉を読み返しても、私には今一つ彼等の気持ちが理解できず、「何も死ぬことはなかったろう」と思わずにはいられませんでした。

 「ひとつでも間違いを起こしたら、もうその時点でアウト。それがぼくたちに与えられた厳しいルールなんだから」と少年は言います。

 「死んだ気になって、もう一度やり直してみよう」という選択肢がないとしたら、それはあまりにも悲しい人生だ と言えるのではないでしょうか?

 解説に「子供の言葉にならない叫び に耳を傾けながら読んで欲しい」とありましたが、現代の子供たちはそんな厳しい現実の中で生きているのかと驚き、やりきれない気持ちになりました。