マミコのひとりごと。

面白かった本をご紹介致します

石井光太 43回の殺意

 石井光太の作品は、「絶対貧困」「物乞う仏陀」「神の棄てた裸体」などのドキュメンタリーや小説「蛍の森」を読んだことがあり、非常に強いインパクトを受けました。

 今回読んだ「43回の殺意」は、川崎中一男子生徒  殺害事件の深層 です。

 カッターナイフで全身を43か所も刺され、凍てつく風が吹き付ける川を泳がされて、息を引き取った少年。

 2015年にこの事件を知った時は、未成年者によるあまりにも酷い殺害の仕方に、大変驚き、心が痛みましたが、それと同時に何故被害者の少年は、13歳にしてこのような仲間に近づき、夜遅くまで遊び歩いていたのかと不思議な気がしたものでした。

 今回このルポを読んで、両親の離婚と母親の交際相手との同居により、家庭にも学校にも居場所を見出だせなかった少年の苦しみ、家にいるくらいなら不良仲間とでも一緒にいる方がまだましだ  と思ってしまうほどの寂しさを知って胸が痛くなりました。

 また、加害者少年たちも決して恵まれた環境に育ったのではなく、育児放棄されたり、非常に貧しかったり、虐めにあっても相談する相手がいなかったり、発達障害を抱えていたりと不幸な少年たちで、普通の学校生活を楽しむことが出来ず、不登校の仲間たちと夜の街に繰り出し、酒を飲んだり、ゲームやアニメにしか興味を持つことが出来なかったのだと思うと、なんともやりきれない気持ちになります。

 勿論、どんな理由があろうと加害者達のやったことは許されることではありません。  ルポの最後の方にあった被害者少年の父親のインタビュー記事。そこには父親の悲しさと無念さ、絶対に加害者を許せない、同じ目に合わせて殺してやりたい と綴られており、その思いは、2人の子供を持つ私にはよくわかります。

 読み進めるうちになんとも切なくなりましたが、大変読み応えのあるルポルタージュでした。