瀬戸内寂聴 私小説
瀬戸内寂聴さん、99歳でお亡くなりになられました。
大往生と言えるでしょうが、寂しいです。夫の弟子と恋愛関係になり、夫 子供を捨てて家出をしてから、51歳で出家をするまで、随分と男性遍歴を重ねて来られたようです。
この 私小説 は連載で、語りての〈私〉が自分の回りに起こったことを、次々と作品の中に取り込んでゆく という形で書かれており、始めから決められたストーリーがある小説ではありません。ですから、実際に起こったことの間に、作者の回想や思い出が語られています。
付き合ったり、同棲していた男性達との生活や会話、何人もの親しい人達との死別、また萩原健一や連合赤軍で獄中にいた、永田洋子をモデルにした人物との交流や文通などが書かれており、「本当にいろいろなことをして来た人なのだなあ」と改めて思った次第です。
でも晩年の寂聴さんは、私の目には、とても優しく魅力的な女性に移りました。
真面目に生きるということは、大切ですし、立派なことだと思います。でもそれだけでは、面白み というものがありません。
私の知り合いでも、唯々真面目一筋に生きて来た人がいました。
それ自体は結構なのですが、その人はいつも自分の生き方や考え方が一番正しいと信じており、自分の基準に合わない人の生き方を認めようとしないのです。
いつも自信満々で、あまり人の話に耳を貸さず、話の大半は、自分の昔話か自慢話でした。
これは、お年寄りにありがちなことですので、2~3回なら相手に合わせてお世辞の一つも言ってあげられるのですが、そう度々同じ話をされては、聞かされている方はたまったものではありません。いい加減うんざりしてしまいます。
寂聴さんは、あまり道徳的とは言えない、奔放な生き方をされてきたからか、他人に対してとても寛大でした。
テレビで、寂聴さんの身の上相談の番組を見たことがありますが、まず相談者の話をよく聞き、決してその人の生き方を否定しません。その上で、肯定するところは肯定し、間違いは間違いとして指摘されます。
相手を包み込むように、優しくアドバイスされるので、相手は癒され、救われるのだと思いました。
もっと年を取った時、若い人から「あの人の話は押しつけがましいから嫌だ」と言われないように、「あの人に相談に乗って貰いたい、アドバイスをして貰いたい」と思われるようなお婆さんになりたいものです。
寂聴さん、ご冥福をお祈りしたいと思います。