貫井徳郎 乱反射
誰もが心当たりのあるようなちょっとした罪。このくらいなら、まあいいか と思ってしまうような怠慢やマナー違反。
その小さな罪の連鎖が引き起こしたのは、二歳の幼児の死に繋がる不幸な事故だった。 しかしそれは、本当に事故といえるのだろうか?
ある地方都市に住む平凡な人達。
恵まれた環境で暮らしながら、子育ても終え、仕事も打ち込める趣味もなく、何か自分の存在価値を見出したい。娘にも認められたいと願っている女性。
小さい時から虚弱体質で、風邪をひきやすく、病院の待ち時間にうんざりしている学生。
医者にはなったものの、長時間の勤務や責任を取ることがイヤで、収入は程々でも少しでも楽なアルバイトでいい と考えているやる気のない医者。
運転が苦手で、母親や高校生の妹に車を出してくれと頼まれる度に、車庫入れで苦労し、いつも美人で要領のいい妹にコンプレックスを抱いている娘。
現役の時は仕事人間で、家庭を顧みなかったこともあり、リタイア後は、娘からも妻からも相手にされなくなった孤独な老人。
出世を望まず、争いを好まず、ただ与えられた仕事を淡々とこなして、無難に生きていけばいいと考えている役所の職員。
仕事熱心なのだが、急に病的な潔癖症になってしまい、何でも消毒しないと触ることができず、汚いものには、異常に反応してしまう造園業の職人。
折り合いの悪い妻と母親の間で、悩んでいる新聞記者。
こんなどこにでもいそうな人達の何気ない日常から悲劇が起こります。
日本推理作家協会賞を受賞しただけあって、半ば過ぎからは、止まらずに読んでしまいました。
こんなことくらい という甘えは、許されないのですね。