マミコのひとりごと。

面白かった本をご紹介致します

染井為人 正体

 埼玉で、一家3人を惨殺し、死刑判決を受けている少年死刑囚、鏑木慶一  当時18歳が脱獄した。

 殺されのは、当時29歳だった井尾洋輔、妻の千草27歳、二人の息子 俊輔2歳である。

  ただ一人殺されなかったのは、50代の洋輔の母だけであった。

 争う物音を聞いた隣人の通報で駆け付けた警察官によって、鏑木はその場で逮捕された。一度は罪を認めたものの、彼は法廷で無罪を主張した。

 しかし状況証拠は、すべて彼に不利であり、彼は死刑を宣告されたのである。

 ある時は、東京オリンピック施設の工事現場のアルバイト、またある時は、ライフニュースを発信するメディア会社の在宅ライター、スキー場の旅館の住み込みバイト、製菓会社のパン工場で働きながら、新興宗教の悪事を調べるなど。

 様々な場所で潜伏生活を送りながら、捜査の手を逃れ、逃亡を続ける彼の目的は何なのか?

 そしてついに、人手不足に喘ぐグループホームの介護職のバイトになった時、彼のとった行動は?

 事件の残虐性を見ると、鏑木は死刑が当然の極悪人に見えますが、名前を変え逃亡を続ける彼は、礼儀正しく、控えめで、心優しい善人にしか思えません。

 だから、逃亡先で彼に出会った人々は、彼が鏑木ではないかと疑いながらも、彼を信じたくなり、警察に通報することを躊躇うのです。

 最後は悲しい結末になってしまい、残念でしたが、とても読み応えのある作品でした。

 染井為人、また好きな作家が一人増えました。