マミコのひとりごと。

面白かった本をご紹介致します

2021-01-01から1年間の記事一覧

乃南アサ 暗鬼

法子は、見合いをして大家族に嫁いだ。 一家の要たるカリスマ大ばばちゃんを中心に、仲睦まじい義祖父母、やさしい舅と姑、朗らかな義妹、そして心から愛してくれるハンサムな夫。 気になったのは、義弟に知的障害があることと、義祖父が数年前から寝たきり…

貫井徳郎 空白の叫び

宮部みゆきの「模倣犯」を読んだ時のような衝撃を受けた作品に、久しぶり出会いました。1300ページを超える大作ですが、全く長さを感じませんでした。 「空白の叫び」のテーマは、法で裁くことのできない 少年犯罪 である。 第一部は、主人公の三人が出会う…

貫井徳郎 追憶のかけら

松嶋真司 34歳は、大学で近代文学を教える講師をしている。 ある日、酔って友人に誘われるまま風俗に行ったことを妻の咲都子に知られてしまい、怒った咲都子は、三歳の娘 里菜を連れて実家に帰ってしまう。 咲都子の父は、松嶋が勤める明城学園の有力者 麻生…

沼田 まほかる 彼女がその名を知らない鳥たち

数年前初めてこの作品を読んだ時、強い衝撃を受けましたが、久しぶりに読み返してみて、やはり凄い作品だなあ と思いました。 北原十和子 33歳。15歳年上の佐野陣治と籍は入れずに一緒に暮らしている。 陣治は6等身の小男で、学歴もなくお金があるわけでもな…

林 真理子 80 50

都内で父から受け継いだ歯科医院を営む大澤正樹。 美しい妻と優秀な娘に恵まれ、一見幸福な人生を送っているように見えるが、他人に知られたくない秘密を持っていた。それは有名中学に合格し、医師になることを目指していたはずの長男 翔太が7年間も引きこも…

町田 そのこ 52ヘルツのクジラたち

本屋大賞 第1位 52ヘルツのクジラたち を読みました。 昔は漁場として栄えたという大分県の海辺の小さな町に、三島貴瑚は東京から移り住んで来た。彼女が住み始めたのは、昔 芸者をしていたという母方の祖母が晩年暮らしていた家。 田舎の人々の好奇な目に晒…

中山七里 逃亡刑事

薬物銃器対策課に所属する 生田忠幸巡査部長が、閉店したカーディーラーのショウルームで何者かに銃殺された。彼は、単独で麻薬密売ルートを探っていたのだ。 捜査にあたるのは、千葉県警刑事部捜査一課の高頭班である。 高頭冴子 32歳 独身。身長180センチ…

貫井徳郎 神のふたつの貌

「人間はもしかしたら、神に見捨てられた存在なのかもしれない」 神の存在を認める一方で、そんな疑念を抱く12歳の 早乙女輝 の苦悩から、物語は始まる。 大正末期に建てられたという田舎町の教会。森を背負うようにそびえる教会には、町が丸ごと見下ろせる…

中山七里 静おばあちゃんと要介護探偵

高遠寺静、大正生まれの80歳。日本で20人目の女性裁判官となり、東京高裁の判事を務めた女性。引退して16年経つ今でも法科大学院の客員教授をし、講演の依頼を受け、忙しい毎日を送っている。 香月玄太郎、70歳。名古屋の不動産会社 香月地所 の代表取締役で…

藤田宜永 愛さずにはいられない

藤田宜永の自伝的小説で、彼が高校生時代の話、人生の中で一番壊れていた時代を書いたそうです。 1960年代後半、藤岡芳郎は福井の比較的裕福な家庭に育ち、東京にある難易度の高い有名男子校に合格して、下宿暮らしを許されたのにもかかわらず、ろくに勉強も…

知念実希人 祈りのカルテ

新米医師の諏訪野 良太は、初期臨床研修で様々な科を回っている。 何度も睡眠薬の多量服薬をし、その度に自分で救急車を呼び、入退院を繰り返す女性。 胃癌の内視鏡手術を拒絶する老人。初めに説明を受けた時には、納得して手術をするつもりだったのに。 料…

薬丸岳 刑事 夏目信人シリーズ

「刑事のまなざし」「その鏡は噓をつく」「刑事の約束」「刑事の怒り」は、 夏目信人シリーズで「その鏡は嘘をつく」以外は、短編集です。 夏目信人は、大学院で教育心理学を学び、罪を犯した少年と向き合う法務技官の職に就いたものの、30歳で警察官の採用…

中村文則 教団 X

突然自分の前から姿を消した女性を探し、楢崎が辿りついたのは、奇妙な老人を中心とした宗教団体、そして彼らと敵対する謎のカルト教団だった。 二人のカリスマの間で蠢く、悦楽と革命への誘惑。 やがて教団は暴走し、国を根幹から揺さぶり始める。その時楢…

伊岡 瞬 痣

平和な奥多摩分署管内で全裸冷凍殺人事件が発生し、被害者の左胸には柳の葉のような印があった。真壁修刑事は激しく動揺する。その印は、亡き妻にあった痣と酷似していたからだ。 彼は愛する妻を無残に殺害されてから、全てにやる気をなくし、2週間後には刑…

中山七里 夜がどれほど暗くても

志賀倫成は、大手出版社の雑誌「週間春潮」の副編集長。充実した編集者生活を送っていた。 しかし大学生の息子 健輔に、ストーカー殺人を犯して自殺したという疑いがかかる。 大学の講師に横恋慕し、ストーキングしたあげく無理心中をはかり、彼女の夫も巻き…

村山由佳 嘘 Love Lies

村山由佳の小説を初めて読みました。 直木賞の他、柴田錬三郎賞、中央公論文芸賞など色々受賞しているのに、今まで全く知りませんでした。 幼い頃に優しかった養父を亡くし、母親の愛人から日常的に暴力を受けていた刀根秀俊に、14歳の時初めて仲間ができた…

山内マリコ あのこは貴族

東京生まれ、松濤の家で何不自由なく暮らす箱入り娘 華子は、結婚を焦ってお見合いを重ね、ついに義理の兄の紹介で、ハンサムな弁護士 青木幸一郎と婚約する。 一方、地方生まれの美紀は、猛勉強の末に慶応大学に入学するが、父親が仕事を失ったこともあり、…

小池真理子 やさしい夜の殺意

両親と喧嘩をして実家を出た久美は、兄の家に身を寄せることになる。 兄とは13年間疎遠ではあったが、彼は郊外の瀟洒な一軒家に、物静かな美しい妻と幸せに暮らしており、久美を温かく迎えてくれた。 初めて兄の家を訪れた日、久美は長い間兄と会っていなか…

東野圭吾 怪笑小説

東野圭吾の短編集に怪笑小説 毒笑小説 黒笑小説 歪笑小説があります。 皮肉やブラックジョークが効いていて、面白い作品が多いのですが、中でも私は、怪笑小説の中の 一徹おやじ という話が大好きです。 息子をプロ野球選手にするために、小さい時から特訓(…

東野圭吾 あの頃 ぼくらはアホでした

なんだか笑いたくなって あの頃 ぼくらはアホでした を読み返してみました。 東野圭吾は、1958年の大阪の生まれ。学年は私と同じです。 私も5歳から大学卒業まで、阪急神戸線の大阪と神戸の中間あたりに住んでいたので、なんか親しみを感じます。 このエッセ…

中島らも しりとり えっせい

本棚でずっと昔に買った中島らも のエッセイを見つけました。 しりとり→リトマス試験紙→白雪姫→メタモルフォーゼ→ぜいたく というふうに しりとりをしながら、思いついたまま、いろん知識や逸話を披露していくというエッセイ。何ということはないのですが、…

石井光太 43回の殺意

石井光太の作品は、「絶対貧困」「物乞う仏陀」「神の棄てた裸体」などのドキュメンタリーや小説「蛍の森」を読んだことがあり、非常に強いインパクトを受けました。 今回読んだ「43回の殺意」は、川崎中一男子生徒 殺害事件の深層 です。 カッターナイフで…

中島らも 今夜すべてのバーで

随分前に一度、中島らものエッセイを読んだことがあって、ハチャメチャだけど面白い文章を書く人だなあ と思ったことがあります。 先日、久しぶりに書店で彼の文庫が平台に置いてあるのを見つけ、読んでみることにしました。 この作品は、吉川英治文学新人賞…

中山七里 スタート

伝説的映画監督 大森宗俊が、3年ぶりに新作「災厄の季節」を撮ることになった。 早速 大森ゆかりの裏方たちに召集がかかる。その中には、若き助監督 宮藤映一も含まれていた。TV番組のADの仕事や、気合の入らない映画の現場に嫌気がさし、明るいうちからやけ…

伊岡瞬 本性

40歳独身の中学教師 梅田尚之は、お見合いパーティーで〈サトウミサキ〉と出会う。 彼女の虜となり、逢瀬を重ねる尚之だが、彼女はなかなか自分のプライバシーを語ろうとせず、結婚の話が進むにつれてミサキは不振な行動を見せ始める。 一方、若手刑事の宮下…

宮部みゆき この世の春

宮部みゆきの作品を久しぶりに読みました。 デビュー30周年記念作品として刊行され、令和元年12月に文庫化されたようです。 小説の舞台は、下野国(しもつけのくに)にある北見藩という架空の藩である。 隠居した元作事方組頭の各務数右衛門(かがみ かずえ…