マミコのひとりごと。

面白かった本をご紹介致します

西條奈加 上野池之端 鱗や繁盛記

騙されて江戸に来た13歳の少女 お末の奉公先「鱗や」は、料理茶屋とは名ばかりの、いわば連れ込み宿だった。 好色で、寄合と称しては妾のもとに出かけて行く主人 宗兵衛。 内儀のお日出や娘のお鶴は、高価な買い物や芝居見物にうつつを抜かしている。 その上…

東野圭吾 透明な螺旋

ガリレオシリーズの最新作を読みました。 南房総沖で漂流している遺体を海上保安庁のヘリコプターが発見した。 遺体は損傷がひどく、身元を示すもの何もはなかったが、20代から40代の男性であろうと推定された。背中に射創と見られる傷があり、司法解剖の結…

中山七里 嗤う淑女 ふたたび嗤う淑女

「ふたたび嗤う淑女」の文庫が発売されたので、前に読んだ「嗤う淑女」と続けて読んでみました。 野々宮恭子は、中学校でずっと苛められていた。そこに従妹の蒲生美智留が転校してくる。美智留は自分の持つ 美しさとしたたかさを使って恭子のへの苛めを止め…

西條奈加 善人長屋

久しぶりに時代劇の短編集を読みました。西條奈加の作品を読むのも初めてです。 とっつきに質屋 千鳥屋があるので、本当は千七長屋という名前であるのに、差配も店子も情に厚い善い人ばかりが住むと評判になり、善人長屋という二つ名のある長屋。 しかし実は…

平野啓一郎 ある男

平野啓一郎の作品を初めて読みました。 弁護士の城戸章は、かつての依頼者 里枝から奇妙な相談をうける。 夫の谷口大祐が、仕事中の事故によって命を落とした。 大祐の実家に連絡して、やって来た弟により、大祐が全くの別人だということが判明した というの…

貫井徳郎 愚行録

閑静な住宅街のしゃれた一軒家で、一家4人が残忍な方法で殺害された。 早稲田をでて、大手ディベロッパーに就職し、同世代の男性に比べれば破格の収入を得ていた夫。 聖心から慶応に入り、美人で常に人の輪の中心にいた お嬢様育ちの妻と、可愛らしい二人の…

貫井徳郎 悪党たちは千里を走る

「真面目に生きても無駄だ」 としょぼい騙しを繰り返す詐欺師コンビの高杉と園部。 仕事先で知り合った同じく詐欺師の菜摘子と手を組み、豪邸の飼い犬を誘拐しようと企てる。 誰も傷つけず安全に大金を手に入れようとするのであったが、その邸の家庭事情を探…

貫井徳郎 天使の屍

イラストレーターの青木と妻の美保子。彼等の中学生の息子 優馬は、青木と血の繋がりはなかったが、成績優秀で、親から見て「良い子」であった。 優馬は、テレビでの中学生のいじめによる自殺の報道を見て、「苛められて自殺するなんて馬鹿だよ」と言う。 と…

貫井徳郎 迷宮遡行

迷宮遡行は「慟哭」で華々しくデビュウした貫井徳郎が、2作目に発表した「烙印」を全面改稿して、新なタイトルを冠した作品だそうです。 「あなたとはやっていけなくなりました。ごめんなさい。私を探さないでください」 ある日突然、妻の絢子はそれだけを書…

貫井徳郎 明日の空

主人公の真辺栄美は、17歳までアメリカで生まれ育ち、高校3年となる春に帰国する。 「日本人は、みんな一緒なのが好きなんだ。目立つといじめられる。」と父親に忠告され、不安な気持ちを抱えて日本の高校に編入するが、予想に反してクラスメートは皆 親切だ…

貫井徳郎 転生

主人公は、心臓移植の手術を終えたばかりの青年 和泉。 体調は手術前に比べてうそのようによくなったが、食べ物の好みが変わり、今まで興味のなかったショパンの曲に心を奪われ、絵画にも興味を持ち、急に絵が上手く描けるようになったりする。 また、突然夢…

貫井徳郎 悪の芽

東京グランドアリーナで、アニメコンペンション 通称アニコンが開かれようとしていた。入場待ちの列は長く続く。 その行列に火炎瓶を投げ込んだ男がいた。火炎瓶は一本だけではない。逃げ惑う人々に、男は次々と火炎瓶を投げ続ける。そして最後に焼身自殺し…

中山七里 護られなかった者たちへ

仙台市で他殺死体が発見された。拘束したまま餓死させる という残酷な殺害方法から、担当刑事の苫篠は、怨恨の線で捜査を始める。 被害者は、福祉保健事務所の課長 三雲忠勝。人から恨まれるとは思えない聖人のような人物で、容疑者は一向に浮かんでこない。…

桐野夏生 夜の谷を行く

山岳ベースで行われた連合赤軍の「総括」と称する凄惨なリンチにより、12人の仲間が次々に死んだ。 アジトから逃げ出し、逮捕されたメンバーの西田啓子は、5年間の服役を終え、人目を忍んで慎ましく暮らしていた。 しかしある日、元同志の熊谷から連絡が入り…

貫井徳郎 宿命と真実の炎

後悔と真実の色 の続編 宿命と真実の炎 を読みました。 幼い日に、警察によって運命を狂わされた誠也とレイ。大人になった二人は、自分達を不幸にした警察官への復讐を始める。 前回の主役である西條輝司は、警視庁捜査一課九係の警部補で、ハンサムにして洞…

柚月裕子 暴虎の牙

孤狼の血 凶犬の眼 に続く完結編 暴虎の牙 を読みました。 昭和57年の広島呉原。愚連隊「呉寅会」を率いる沖虎彦は、ヤクザも恐れぬ圧倒的な暴力とカリスマ性で、勢力を拡大していた。 広島北署二課の刑事 大上章吾は、沖と呉原最大の暴力団 五十子(いらこ…

貫井徳郎 新月譚

美貌の女流作家 咲良怜花。彼女は、9年前 突如として筆を折った。 彼女の大ファンである 若手編集者の渡部敏明は、怜花に絶筆宣言をした理由を聞き出し、執筆を再開して貰おうと彼女の自宅を訪れる。 数回の訪問によって、敏明の真摯な思いに心を動かされた…

乃南アサ 暗鬼

法子は、見合いをして大家族に嫁いだ。 一家の要たるカリスマ大ばばちゃんを中心に、仲睦まじい義祖父母、やさしい舅と姑、朗らかな義妹、そして心から愛してくれるハンサムな夫。 気になったのは、義弟に知的障害があることと、義祖父が数年前から寝たきり…

貫井徳郎 空白の叫び

宮部みゆきの「模倣犯」を読んだ時のような衝撃を受けた作品に、久しぶり出会いました。1300ページを超える大作ですが、全く長さを感じませんでした。 「空白の叫び」のテーマは、法で裁くことのできない 少年犯罪 である。 第一部は、主人公の三人が出会う…

貫井徳郎 追憶のかけら

松嶋真司 34歳は、大学で近代文学を教える講師をしている。 ある日、酔って友人に誘われるまま風俗に行ったことを妻の咲都子に知られてしまい、怒った咲都子は、三歳の娘 里菜を連れて実家に帰ってしまう。 咲都子の父は、松嶋が勤める明城学園の有力者 麻生…

沼田 まほかる 彼女がその名を知らない鳥たち

数年前初めてこの作品を読んだ時、強い衝撃を受けましたが、久しぶりに読み返してみて、やはり凄い作品だなあ と思いました。 北原十和子 33歳。15歳年上の佐野陣治と籍は入れずに一緒に暮らしている。 陣治は6等身の小男で、学歴もなくお金があるわけでもな…

林 真理子 80 50

都内で父から受け継いだ歯科医院を営む大澤正樹。 美しい妻と優秀な娘に恵まれ、一見幸福な人生を送っているように見えるが、他人に知られたくない秘密を持っていた。それは有名中学に合格し、医師になることを目指していたはずの長男 翔太が7年間も引きこも…

町田 そのこ 52ヘルツのクジラたち

本屋大賞 第1位 52ヘルツのクジラたち を読みました。 昔は漁場として栄えたという大分県の海辺の小さな町に、三島貴瑚は東京から移り住んで来た。彼女が住み始めたのは、昔 芸者をしていたという母方の祖母が晩年暮らしていた家。 田舎の人々の好奇な目に晒…

中山七里 逃亡刑事

薬物銃器対策課に所属する 生田忠幸巡査部長が、閉店したカーディーラーのショウルームで何者かに銃殺された。彼は、単独で麻薬密売ルートを探っていたのだ。 捜査にあたるのは、千葉県警刑事部捜査一課の高頭班である。 高頭冴子 32歳 独身。身長180センチ…

貫井徳郎 神のふたつの貌

「人間はもしかしたら、神に見捨てられた存在なのかもしれない」 神の存在を認める一方で、そんな疑念を抱く12歳の 早乙女輝 の苦悩から、物語は始まる。 大正末期に建てられたという田舎町の教会。森を背負うようにそびえる教会には、町が丸ごと見下ろせる…

中山七里 静おばあちゃんと要介護探偵

高遠寺静、大正生まれの80歳。日本で20人目の女性裁判官となり、東京高裁の判事を務めた女性。引退して16年経つ今でも法科大学院の客員教授をし、講演の依頼を受け、忙しい毎日を送っている。 香月玄太郎、70歳。名古屋の不動産会社 香月地所 の代表取締役で…

藤田宜永 愛さずにはいられない

藤田宜永の自伝的小説で、彼が高校生時代の話、人生の中で一番壊れていた時代を書いたそうです。 1960年代後半、藤岡芳郎は福井の比較的裕福な家庭に育ち、東京にある難易度の高い有名男子校に合格して、下宿暮らしを許されたのにもかかわらず、ろくに勉強も…

知念実希人 祈りのカルテ

新米医師の諏訪野 良太は、初期臨床研修で様々な科を回っている。 何度も睡眠薬の多量服薬をし、その度に自分で救急車を呼び、入退院を繰り返す女性。 胃癌の内視鏡手術を拒絶する老人。初めに説明を受けた時には、納得して手術をするつもりだったのに。 料…

薬丸岳 刑事 夏目信人シリーズ

「刑事のまなざし」「その鏡は噓をつく」「刑事の約束」「刑事の怒り」は、 夏目信人シリーズで「その鏡は嘘をつく」以外は、短編集です。 夏目信人は、大学院で教育心理学を学び、罪を犯した少年と向き合う法務技官の職に就いたものの、30歳で警察官の採用…

中村文則 教団 X

突然自分の前から姿を消した女性を探し、楢崎が辿りついたのは、奇妙な老人を中心とした宗教団体、そして彼らと敵対する謎のカルト教団だった。 二人のカリスマの間で蠢く、悦楽と革命への誘惑。 やがて教団は暴走し、国を根幹から揺さぶり始める。その時楢…